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日本橋の吸血魔

戦前の東京朝日新聞に、こんな記事が載っていた。
精神病者の生き血を絞る 娘をヲトリに使ふ 世にも恐しい偽医検挙」

府下五日市警察署では五日早朝から日本橋区亀島町一ノ四二矢追駒次郎(六二)を引致し世にも珍しい吸血魔として厳重取調中である

その顛末はこうらしい。

同年春、とある精神病患者の家族が医者を探していると、同氏が「自分は独特の治療法を施す」と現れた。同氏に治療を任せたところ、6回にわたって患者の動脈を切った。

1回に1合ほどの血液を搾り取り、治療費として25円ずつを請求。しかし患者はこの治療によって死亡してしまった。そこで家族が同氏を不審に思い、警察に届け出て検挙に至った。

取調べでは次のようなことが明らかになった。

医師の資格をもたない同氏は、医専を卒業した長女を院長にみせかけ自宅に病院の看板をかかげた。その裏で自分のことを「大先生」「博士」などと呼ばせ、精神病に対しまだ医学界で知られていない独特の治療法を持っている、秘密裡に申し込んだ者だけに対応する、として獲物を集めていた。

同氏にかかった人は「血療法」として血を搾り取られ、1回あたり25〜40円の治療費をせしめられたという。

犯罪の露見を恐れ、同氏は他の医者にかかっている者は決して治療を施さず、また同氏にかかった者は他の医者にかかることだけでなく、他言すら禁じられていたそうだ。

記事では長女も共犯として取調中である、と述べられている。

集めた血はどうしていたのだろう。気になったが、残念ながら少し調べただけではこの事件の詳細を見つけることができなかった。

参照:
東京朝日新聞 1930(昭和5)年6月6日 夕刊 2頁「精神病者の生き血を絞る 娘をヲトリに使ふ 世にも恐しい偽医検挙」.