COLUMN
またしても戦前の東京朝日新聞から。 1938(昭和13)年1月16日、神奈川県高座郡綾瀬村の人里離れた山中で、女性の変死体が見つかった。 変死体は腹部を刃物で立割られた裸体でその上に単衣様のもの二枚をかけ更に菰を被せて隠してあり殺害後遺棄したものか或…
戦前の東京朝日新聞に、こんな記事が載っていた。「精神病者の生き血を絞る 娘をヲトリに使ふ 世にも恐しい偽医検挙」 府下五日市警察署では五日早朝から日本橋区亀島町一ノ四二矢追駒次郎(六二)を引致し世にも珍しい吸血魔として厳重取調中である その顛…
どんなに思いを募らせても、失われてしまった過去の文化は体験できない。レプリカはあっても、その時代の空気に触れ、包まれることまではできない。あらゆる記述をかき集めて想像にふけり、どんなに素敵だったろうとため息をつくしかなかったりする。私にと…
古本屋で『醫事雑考 奇。珍。怪』なる背表紙に目をひかれ、つい購入してしまった。田中香涯著、1940年発行(鳳鳴堂書店)だ。 田中香涯は1874(明治7)年大阪生まれ、解剖医として活躍した人物である。自序には次の通り、本書の目的が記されている。 本書は…
古本屋でふと見かけた『便所異名集覧〈増補版〉』の背表紙。シンプルな書体に、不思議なロゴマーク(中国周時代の水鳥をかたどった銅製水差しをもとにデザインしたとのこと)。はじめは変な本だなあと手にとったが、ページをめくるや否や、その面白さに目を…
「日本書紀」にとんでもない暴君っぷりを書かれた天皇がいる。第25代、武烈天皇だ。 「古事記」では武烈天皇について、ものすごく端的に「子どもがいなかった、そのため袁本杼命が皇位継承者として招かれた」ことのみ書かれている。 それなのに「日本書紀」…
ちょうど手元に「日本霊異記」がある。正式名称は「日本国現報善悪霊異記」、平安時代初期に編まれた日本最古の仏教説話集だ。 仏の偉大さや因果応報を学ぶ書だが、ぶっとんだエピソードがてんこもりなので、奇談をたのしむために読んでしまう。 宮子姫伝説…
仕事の必要から『偉人たちのあんまりな死に方 ツタンカーメンからアインシュタインまで』(G・ブラッグ 著, 梶山あゆみ 訳, 河出書房新社)を読んだのだけど、まあこれが面白い。 アメリカのヤングアダルト作家である G・ブラッグ氏が、多くの論文や資料をも…
髪1本にほれこんだ天皇が持ち主に会いたがったため、田舎から後宮に連れてこられた宮子姫(髪長姫)。つるっぱげで生まれた彼女の髪を生やしてくれたのが、海底から拾われた黄金の観音像だった。その観音像をまつるため、建設されたのが道成寺である。 『道…
こちらの記事で道成寺縁起の3物語を整理して、こちらの記事では最初の物語である「宮子姫髪長譚」を紹介した。 怒れる蛇女清姫がうそつき僧侶安珍を蒸し焼きにした伝説のみが、道成寺縁起というわけではないのだ。 道成寺建立のうらでは、美しく長い(長す…
前回の記事で道成寺縁起には3つの物語があるとわかった。 まずは最初の物語である「宮子姫髪長譚」を読んでみたい。底本はもちろん『道成寺絵とき本』だ。引用ではなく、ざっくりとまとめなおしてある。 道成寺開創縁起 宮子姫髪長譚 九海士の里でうまれた…
「道成寺もの」がすきで、いろいろ調べたり集めたりしている。 清姫という少女が安珍という僧にひとめぼれし、あの手この手で誘惑をした。しかしつれない安珍。「あとでまた来るから」となだめつつ去った安珍、清姫が待てど暮らせど彼は戻ってこない。怒った…
病みあがりの、あと少しだけ安静にしていなきゃならない、という時間がけっこうすきだ。ベッドでなにをしようかな。先日体調を崩した折、ひさしぶりにインターネットの怖い話を読んでいた。 「蟹のドラム缶風呂」のページで、そういえば「諸国悪もの食い」に…
カニバリズムというと、古今東西あらゆる逸話や事件が語り継がれており、それをモチーフにしたフィクション作品もあまたある。 「諸国悪もの食い」にもカニバリズムの話題があったので、まとめて紹介したい。 まずは「まあありそうだな」とうなずける、胆を…
明治40(1907)年、東京朝日新聞に連載されていたシリーズ「諸國惡もの食ひ」。(以後「諸国悪もの食い」と表記しますね) 日本各地の「悪食」をレポートする愉快な記事だ。 第1回では東京の「縞蛇の附焼き(つけやき)」が紹介されている。 この縞蛇のつけ…